「カンボジア自転車旅行」(平戸平人著、連合出版)
自転車で旅をしてその記録を本にするというのは旅行記のひとつのジャンルとして確立しているが、カンボジアの自転車旅行記というのはこれまであまりなかったのではないかと思う。
その理由だが、ひとつには、ポルポト後の治安の問題があった。
1990年代のおわりまでは、いなかに行くのは、場所によってはかなり危険をともなうとかんがえられていたし、2000年代に入っても、なにやら危険な雰囲気は残っていた。
しかし地方のこういう怪しい雰囲気は急速に消えていき、それにともなって旅行者の行動範囲はひろがっていった。
「カンボジア自転車旅行」(平戸平人著、連合出版)という本は、そういうカンボジアをめぐる変化を背景にしているのだと、感慨ふかくわたしは読んだ。
かつてわたしが訪れたときには相当の緊張を強いられた場所が、時をへて平和な場所へとかわっていったことが、この本を読んで実感できた。
著者は勤務していた会社を退職してから突然のようにインドシナ半島の自転車での旅をはじめている。それまでに自転車での旅に習熟していたのではないところがおもしろい。
旅の日程や毎日のできごとなどがことこまかに書かれているし、巻末にはカンボジアを自転車で旅するにあたっての心得もあるから、自分も自転車で旅行してみたいとかんがえるひとには参考になるだろうし、カラーとモノクロの写真や地図もたくさん掲載されているからそれだけでも楽しめるだろう。
ところで、わたし自身はカンボジアを自転車で旅行したことはないのであくまでも憶測にもとづいて書くのだが、この本を読んで自分もおなじように自転車で旅行をしてみたいというひとは、そうとうに慎重に具体化したほうがいいと個人的には思う。
パッケージツアーや比較的無難な個人旅行ならば目的と結果はおおよそ想像がつくけれども、自転車で、しかもひとりで、ふつうの旅行者のいかないようないなかまで入り込んでいくとき、なにが起きるかは予想がつかない。著者は結果としてうまくやりおおせたわけだが、不確定のパラメーターがおおすぎる旅のスタイルであるのはまちがいなく、そういうときに自力で対応して解決できるかどうかが鍵になるはずだ。
カンボジアが今後経済的に発展していくのはまちがいなく、それにともなって地方も開発が進んでいくはずだ。この本に書かれているようないなかの情景やひとの生き方も、あっというまに変わっていくにちがいない。そうかんがえると、本書が書かれた時代のカンボジアの記録として価値が出てくる時代は意外にちかいのではないかと思った。
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by hatano_naoki | 2012-04-02 17:09 | カンボジア
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