沖縄勉強ノート(2)ふなやれ
d0059961_9144425.jpgりんけんバンドが1991年に発表したアルバム「カラハーイ」の中に「ふなやれ」(詞:桑江良奎、曲:照屋林賢)という曲がある。
琉球から中国に向かう進貢船(中国皇帝に貢ぎ物を捧げるためのいわゆる朝貢貿易に使われた船)の航海をうたったもので、タイトルの「ふなやれ」は航海を意味する琉球のことばである。そういえばアルバム名のカラハーイ(karahaai)は唐(kara)から伝来した針(haai)、つまり羅針盤のことで、りんけんバンドのホームグラウンドであるライブハウスの名でもある。
琉球は14世紀から16世紀中期にかけて中国、東南アジア、朝鮮、日本との中継貿易を行っていた。琉球からの貿易品は硫黄・馬・貝、日本産の砥石・刀、銅製品、東南アジア産の染料・胡椒・象牙などで、中国からは絹織物、焼物などを輸入した。
進貢船はこうした交易のために中国のジャンク船の建造技術でつくられた大型木造帆船で、おきなわワールドで再現されている「南都丸」は全長31m、幅8m、総重量110トン。メインマストの高さは30m近くあるという。当時の進貢船は那覇港の一角にある造船所で建造され、竜骨(キール)には松材が使われていた。
進貢船はほぼ2年に1回、中国に向かった。那覇を出た進貢船は琉球の島々をたどるように福建省を目指した。島々では狼煙を上げて目印とし、船の安全を図ったという。進貢船は通常二隻ないし四隻で航海し、福建省と那覇港の間は10日程度かかっていたらしい。
りんけんバンドの「ふなやれ」に戻ると、この曲は実に航海の雰囲気を映し出していると感じる。海原を進む大型木造帆船は交易によって大きな富をもたらす国家の繁栄の象徴だったにちがいない。船を漕ぎ出す勇気、別れの悲しみ、旅の途上で目撃する美しい光景の数々。波にゆすぶられる船の動き。ドラマチックな航海の光景が上原知子の情感にあふれた声で歌い上げられる。

d0059961_20394897.jpg船ぬ習や別りぬ習(ふにぬなれやわかりぬなれ)
船を知ることは別れを知ること

「ふなやれ」の醸し出す、たゆたう感覚は沖縄の原初的な感覚の一部であると感じられ、勇壮な海上交易国家がその後に経験することになる苛烈な運命を私に一瞬忘れさせるのだった。
(進貢船の図(部分)。沖縄県立博物館蔵)

(追記)「ふなやれ」の正確な意味を確認していないことに気がついていろいろ調べてみたが、琉球語の辞書にも載っていないようだった。調べかたが悪いのかもしれない。結局、りんけんバンドの曲名の英訳であるsail awayから類推して船出あるいは出航という意味だという結論にたどりついた。
(追記その2)外間守善著「沖縄の歴史と文化」(中公新書)では「ふなやれ」は「船遣れ」と表記し、「航海」と訳している。「ふなやれ」が「船遣れ」だろうとは想像していたが。やはり「航海」と訳すべきなのだろうか。ただの航海ではなく船を遣わす、つまり朝貢のニュアンスがこめられているようにも思えるのだが。
[PR]
by hatano_naoki | 2005-11-17 09:14 | 沖縄勉強ノート
<< 沖縄勉強ノート(3)フクギ 沖縄勉強ノート(1) >>