紳士の反逆~ダンディズムについて~
d0059961_11211675.jpg巷ではダンディとかダンディズムとかいうことばをよく耳にする。
○○のダンディズムというような使い方をする。やくざのダンディズムとか、サラリーマンのダンディズムとか、ダンディズムということばをくっつければなんとか恰好がつくと考えられている。こういう表現は「かっこいい」とほぼ同義で、それほど意味を持っているわけではない。
ダンディズムというのは本来、19世紀イギリスの上流社会に生まれたあるライフスタイルを指すことばだった。
言葉自体は18世紀に生まれたとされるが、語源はフランス語の"dandin"(間抜け)、"dandipart"(ろくでなし)であるとか、さらにはサンスクリットで「杖」を意味するDANAであるとかいう薀蓄には今のところ論証するすべがない。
ダンディズムは狭義には英国の紳士のおしゃれの哲学であり、その本質は近代のもたらした物質主義による個人の疎外に精神で対抗しようとする懐古的な色彩に彩られた一種の自己崇拝である、という説明は納得できる。
ダンディズムを実践したとされる人物としては英国王ジョージ4世の友人であったジョージ・ブライアン・ブランメル、オスカー・ワイルド、バイロン、ボードレール、プーシキンといった人々の名前がよく挙げられる。いずれにしても凡人はお呼びではないようだ。
19世紀のイギリスという特定の時代、特定の地域に流行した比較的狭小なライフスタイルを指すダンディズムということばの意味がその後に信じられないくらい拡張され、普遍化していったわけだ。
私がイメージするダンディズムのキーワードを順不同で並べてみると、
1)枯れた自己愛(生々しくギラギラしていてはいけない。ある程度老成しなくては)。シニカルな自己陶酔。上品な色気。
2)基本的に自分を愛する姿勢。自分の生きかたを愛する姿勢といったほうがいいだろう。
3)生きる原理原則(思想、ファッション、ライフスタイル、交友、座談、趣味、行動様式などに関して)=自分なりの決め事を持つこと。それが抜きん出た水準に達していること。
4)抜きん出た技術、技能、能力を持ち、それを誇らないこと。
5)自己顕示的ではなく自己充足的であること。
6)独自の時代認識を持ち、それに対する批評的な(批判的、ではないことに注意)生き方を展開すること。
7)目利きであること。確かな批評眼を持つこと。
8)権力に対して反逆的ないしはおもねない。金権的でない。
9)群れない、迎合しない、追従しない。模倣しない、潔い、聡明、溺れない。
10)大衆に対する蔑視と失望。美意識に拠る価値観。知性と教養。
こうして並べてみると、こういう資質を持った奴が本当にいるのか、というような雰囲気だが、生き方のモデルを探求するのは悪いことではない。大義の失われた現代においてダンディズムの追求は個への撞着の一形態としてそれなりの意味を持ちうるだろう。
(写真はダンディズムの祖とされるジョージ・ブライアン・ブランメルの肖像)
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by hatano_naoki | 2005-11-30 11:17 | 日日
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