アンドレ・マルロー「王道」
d0059961_6161047.jpgアンドレ・マルロー「王道」を読んだ。
1920年代のフランス青年の植民地アジアに対する野放図な思考と行動の書だ。
当時のカンボジアが独立した尊厳のある国家であったなら、こういう思考は生まれなかっただろうと思いながら読んだ。
彼らのこういった「自由」の感覚と罪悪感のなさ、鈍感さは植民地主義的感性そのものだと思うし、さらにいえば白人にいまでも生きている感性だと思う。
描かれているカンボジアの風土はいわゆる熱帯のジャングルにおおわれており、そこには「原住民」と未開の少数民族が住む。マルローがカンボジアの自然環境を知らなかったとは思えないから、こういう舞台装置は意図的な作り物なのだろうが。
バンテアイ・スレイらしき遺跡が登場するが、その位置はシェムリアップからずっと北のダンレック山脈近くに設定されているようだ。
植民地主義の探検とは伝統的に略奪を伴った。その意味ではこの小品は植民地時代というものを正確に反映した冒険・ピカレスク小説だといえないこともない。

追記。
本物のマルローは1901年パリ生まれ。たぶんある種の天才で、その行動は怪物的である。カンボジアに行って盗掘を行い、プノンペンで起訴されたのは22歳頃の話である。一審懲役、二審執行猶予で最高裁では無罪になった。
植民地であったからこそ宗主国の小悪党は裏から手を回して裁判で無罪を勝ち取ることができたということだろう。
マルローが犯罪行為である盗掘をどう言い訳しているか知りたいものだ。
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by hatano_naoki | 2006-05-08 05:58 | カンボジア
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