神楽坂でひとに会うことになり、久しぶりに夜の神楽坂を歩いた。
温かい雨が降っている。 神楽坂界隈はこじんまりとしていて喧騒もほどほどであり、町並みには繁栄を目指した過度の計画性に翻弄されることなく発展してきた自然な雰囲気が漂う。 電線の地中化と緑豊かなけやき並木、道幅がほどよく狭いことなどが寄与しているにちがいない。 新しい店が増えているが町の空気じたいが壊されるところまではいっていない。点在する高級料亭に象徴される色町のなごりが町の新宿化を食い止めている。 神楽坂の魅力のかなりの部分は坂と路地に負っている。坂は飯田橋よりの傾斜が強く、坂を上るにつれて傾斜がゆるくなっていく。 坂からは左右に路地がのびているが、これらの路地は基本的に坂から緩やかに下っていく構造になっている。 この夜に行ったのは軽子坂にある評判のいい"エル・カミーノ"(El Camino)。 ビルの2階にあるこじんまりしたスペイン料理店だが確かに美味である。 料理は全体に上品で量が少なく、ひとによっては不満かもしれないが、いろいろな料理が食べられるメリットもある。私は満足だった。カジュアルな雰囲気で、長居して話し込んでも、ちょっと飲んで帰ってもいい。値段もまあまあで高いという感じはない。ふらっと寄りたい止まり木のような店だが予約がないときびしいのが唯一の欠点だ。 路地から路地へと歩き回るのも神楽坂の楽しみのひとつだ。道は迷路のように複雑というわけではない。むしろ単純だといっていいだろう。だから迷う楽しみはないが、迷うふりをするという遊びもある。 そのあと老舗"POWWOW(巴有吾有)"でコーヒーとケーキ。古い喫茶店というのは独特の存在感があっていいものだ。内装の木の迫力がなかなかだ。こういう個性のある店が減っているのが残念だが、そういう自分自身もふだんはチェーンのコーヒーショップばかりを使っているのだった。
by hatano_naoki
| 2006-05-20 12:26
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