沖縄の歴史年表を書いている。
3万2千年前とされる山下町第一洞穴遺跡の時代から現代にいたる年表。 もちろんこの時間の全体を同じ尺度で紙に移すわけにはいなかい。おおざっぱに3万年前~1万年前、1万年前~紀元0年、紀元0年~500年、500年~1000年、1000年~1850年、1850年~2000年と区切り、時代が下るごとに詳しくなっていくようなつくりになっている。全体の長さは160センチくらい。最初はA4判2枚分くらいだったのだが、次第に増殖していくデータを収容するために紙を継ぎ足していったらこうなった。 何十冊かの本から抜き出したデータをこの年表に書き写していく。歴史的なできごとだけでなく大きな時代のうねりも書き込んでいく。こういう作業は沖縄の歴史を頭に入れるのに役に立つ。ゆっくりとした変化がわかってくるのが面白い。たとえば沖縄が何度か経験した日本化や中国化、隆盛と没落といったうねりが見えてくる瞬間はスリリングだ。ここまで手間をかけた年表を作ったのははじめてだが、私個人としては対象を理解する方法として有効だと思う。この年表ひとつを見ながら本を書くことすらできそうな気がしてくる。自分で書く歴史年表は、実際には他人の知識の切り張りであるのだが、なにかとても生き生きと感じられるのだ。 以前、カンボジアの歴史について同じような年表をつくろうとしたことがあった。これは中途半端に終わったが、その主な目的は仮説・主張の整理だった。カンボジアの古代史・中世史はわからないことが多く、また研究者によって意見が大きく違っていることも少なくない。それらの説を年表上で混在させるのではなく、ある研究者がどのような主張をしているのかがわかるような整理をした。沖縄の年表はだいぶ全体像が見えてきたが、カンボジアについても同様の自分なりの年表を改めて作ってみるのがいいかもしれない。 3月12日の追記。 この年表は私の作り出したフィクションかもしれない。データを集積していく作業は客観的で実証的にも見えるが、書き込むデータ次第で歴史の印象は大きく違ってくるし、データの読み方もいろいろあるだろう。なによりも危険なのは、落ち着きのいい読み方(=納得できる物語)を私が欲しているということだ。ここでは物語の自己完結性が自然に必要とされてくる。頭のいい研究者ほど物語の完全性という落とし穴に落ち込みやすいのではないか。
by hatano_naoki
| 2007-03-10 21:44
| 沖縄勉強ノート
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