突出する悪意、あるいは悪意の伝播
ガードレールから突き出した金属片が日本各地で多数発見されているという。

2005年6月3日の読売新聞をもとにした事件の経緯は以下のようである。
5月28日、埼玉県行田市の男子中学生が市道を自転車で走行中にガードレールに挟み込まれた三角形の金属片で軽傷を負った。金属片は2個あり、長さ8~14センチ。行田署が付近を調べたところ、数か所で金属片が見つかり、国土交通省や県などが緊急点検を実施した。
2日現在で43都道府県で確認されており、東日本では19都道県で1700個以上に上っているという。
各地でけが人が出ており、悪質ないたずらが模倣犯的に拡散している可能性もあるとして各警察では道交法違反や傷害容疑で捜査を始めた。

現時点で分かっていることは、次のようなことだ。
1)ガードレールへの設置方法が同じである(ガードレールの継ぎ目に差し込むか、いったんボルトを外して金属片をとりつけ、再び締め直す)。
2)全国各地で発見されていること。
3)大きさは長さ3~30センチとさまざまであること。

まず、現時点ではこれが悪意のあるいたずらなのか、それとも悪意のない別の理由によるのか分かっていないが、仮に悪意に基づく行動だとすると、
1)全国で発見されていることから、おそらく「犯人」はひとりではない。
2)金属片の大きさが違うことから、設置の方法だけが情報として広まったことがうかがわれる。
こういう状況証拠を並べてみると、どうも背景にネットか携帯メールがあるように思える。
つまり携帯のチェーンメールとかウェブ上のBBSとかでいやがらせの提案とか成功報告があり、それをまねする人間がネットを媒介して広がっていくような経過をたどっているのではないかということだ。
これが故意であるならば、尖った金属片をガードレイルに道路側に突き出すように取り付けて誰かが足を傷つけるのを面白がる心理は恐ろしく陰湿だ。おそらく「犯人」は現場に隠れて誰かが通るのを待つことはなく、誰かを傷つける金属片を設置したことで十分に満足したことだろう。

この事件から連想したのは対人地雷のことだった。
対人地雷も待つ兵器である。犠牲者に大きな怪我を負わせるものの殺さないでおいて救出・撤退の人手を増やし、戦闘能力を低下させること、地雷敷設地域に恐怖を蔓延させることで兵士の行動を緩慢にするといったその設計思想の陰湿さは、まさに戦争の生んだ知恵だ。戦争が終わったあとのことなど一切考慮されていない。

突出した金属片は、相手を傷つけることだけを目的としているという意味において、平和な日本に配置され始めたある種の地雷なのかも知れない。ある時代に伏流する悪意は象徴的な犯罪とそれを実行する人物を世の中に送り出す。ガードレールの金属片にもそうした時代のメッセージを感じるといったらおおげさだろうか。

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by hatano_naoki | 2005-06-03 11:09 | 日日
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