元気だったかい、マーロウ
人に会うまでのちょっとした時間つぶしと調べものを兼ねて本屋に入り、文庫本の棚を見て歩きながら、そういえば最近は文庫本を買っていないなと思った。調べたいと思っていたのはブラッドベリのある短編の書き出しの語句だったが、探していた短編集は見つからず、代わりに目に入ったのはいわゆるハードボイルドの作品群だった。
昔からハードボイルドを愛好したということはなかったが、それでもそれなりに面白いと思い、読んでいた時期はある。またちょっと読んでみてもいいかなと思い、ほとんど行き当たりばったりにチャンドラーのマーロウものを一冊買った。
そこで展開されるのは、あのなつかしい、いつまでも独身で、キザでセンチメンタルな探偵たちの「仕事」である。世間的に報いられることはない彼らの「仕事」の物語に自己を投影しやすくなっている自分を発見するのは、人には言えないがちょっとした驚きで、なかなかドラマチックな体験でもあった。そして、人は笑うだろうが、私には自分の人生とか生き方とかが、どうやら彼ら探偵たちに似ているように思えたのだ。探偵に似ているといえないならば、ハンフリーボガートに憧れるユダヤ人の小男に似ているといってもかまわない。
娯楽と仕事と人生と好奇心を切り分けずに生きてきた私は、仕事を忘れるためにミステリを読んだり旅に出たりするような生き方とは無縁である。ただ、自分がミステリーの主人公のように生きたいとは思う。この先ミステリーを読みふけることは多分ないだろう。
[PR]
by hatano_naoki | 2005-06-09 10:15 | 日日
<< 漂流 「謎の金属片」その後 >>