過去を思わず
おそらく過去をなつかしんだことはない。基本的に過去がない。
少し前までは過去というのは文章を書くときにだけ立ち現れる一瞬の幻のようなもので、日常の感覚としては現在と未来しかなかったが、今は未来すらうっすらと消えかかっていてほぼ現在しかない気がしている。
過去をなつかしむ習慣がない理由は、第一に誇るに足る過去がないということかもしれないが、過去を思い出して、昔はよかったとなつかしむ姿勢そのものを嫌っているということの反映であるのもまた間違いない。
過去の記憶というのは一種の繭のようなもので、そこに入り込めば時間と理性は停止し、感情が生き生きとしてくる。回顧し詠嘆し、それによって自分を癒し、なぐさめるやさしい時間。こういう構造そのものが大嫌いなのだ。
過去などどうでもよくて、過去の延長上に今の自分があるとも考えない。過去にかかわるとすれば、それは鮮烈な記憶の瞬間のコレクションの一方法としての関与であってそれ以上でもそれ以下でもない。こういう意識は「消えかかった未来」に直面するとき、さらに過激になってくる。
[PR]
by hatano_naoki | 2008-11-22 23:39 | 日日
<< アスファルト、白線、水道制水弁 晴天 >>