たぶん1978年秋の解散からいくらも経っていなかった頃、渋谷・公園通りの東武ホテルを入っていった私とすれ違ったのが伊藤蘭、通称ランちゃんだった。
彼女がひとりでいたのか、それとも"関係者"と一緒にいたのかさえ覚えがない。なぜかといえば、ランちゃんの周囲には虹色に光り輝く靄(もや)のようなものがかかっていたのである。 その後、何人かの芸能人の実物を見たし、話をしたこともあったけれども、あれほどの靄には出会ったことがない。 キャンディーズのデビューは1973年、引退は1978年。わずか4年半しか活動しなかったというのは今となっては驚きである。 キャンディーズのレコードも買わず(CDの登場は1982年まで待たなければならない!)、もちろんコンサートにも行かず、テレビに出てくる彼女たちを見だけだった私はファンとはいえない。歌がうまいとも思えず、容姿が抜きん出ていたともいえないキャンディーズは、しかし胸がきゅんとなるような存在ではあった。そしてその幻惑的なイメージの中心にいたのが伊藤蘭だったのである。 スーちゃんはひとはよさそうだったが太めでちょっと暑苦しく、ミキちゃんもいい子だったに違いないが愛が足りなかった。しかしランちゃんはガラスのように壊れやすい容姿と程々のさばけた性格を組あわせたほぼ完璧な魅力を備えていた。 アイドルとは生きるという戦いの現場から降りて少し休んでもいいよとささやく存在だ。そこでは自己を弛緩させ、仮想の価値体系に身をゆだねることができる。その意味ではランちゃんはとてもやさしくささやく存在だった。 私がすれちがったランちゃんはたぶん23歳だったはずだ。つまりそれほど若くはなかった。血液型はおおざっぱなO型で、本人はそれほど繊細な性格ではなかったのかもしれない。
by hatano_naoki
| 2006-04-23 16:21
| 目撃・現代史
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