沖縄の食に関してはいろいろなことが言われているが、なるべく整理された正しい知識を得たいと思っていた。いまのところ、私が知りうる限りでは琉球大学の金城須美子さん(もう退官されているはずだが)の一連の論考がもっとも信頼できそうだ。
その一部を、私自身の感想もあわせて簡単にメモしておくなら、 ・沖縄の食文化は日本、中国、占領米軍との接触のなかでそれぞれの影響を受けてきた。 ・沖縄の食で特徴的な豚肉食文化は中国との交流の中で形成された。 ・ただしそれと並行して日本からの食文化の移入もあった。これは14世紀の仏教伝来にともなってのことである。さらに琉球王府が日本の文化を積極的に取り入れようとした時期もあった。 ・戦後は米軍占領下でアメリカ式の食文化がひろく受け入れられた。初期に配給された食料は軍の余剰物資であるランチョンミートやコンビーフなどであり、これは沖縄に存在した肉食文化に合ったために容易に受け入れられた(もちろん最大の理由は飢えだっただろう)。また小麦粉が多量に供給された結果、パン食が一般化したし、沖縄そばの一般化のきっかけにもなった。小麦の供給は日本本土にも行われたが、先日放送されたドキュメンタリーによると、その裏には日本人の米中心の食生活を変えて小麦の輸出先に育てようとするアメリカの意図が隠されていたという。今でも沖縄は米消費が少なく、朝はパン食の家庭が多いという。 ・戦前の沖縄では米の自給率は13パーセントにすぎず、米を主食にしていたのは2割程度でそのほかのひとびとは甘藷が主食だった。この芋もたしか中国から持ち込まれたものだ。 ・沖縄に牛、馬が現れるのは10世紀頃、豚、山羊は14世紀頃に登場する。18世紀半ば以降、豚肉食が庶民にも定着したが、肉が食べられるのは正月などハレの日に限られていた。 ・現在では、外食におけるハンバーガー、家庭におけるサラダ、インスタントコーヒーの消費が多い。若年層は豚肉食から牛(ステーキ)に移行している。 ・中国茶の嗜好も王府時代にはじまる。茶は中国から大量に輸入されていたという。 ・現代の沖縄は、食の面でも本土化がすすんでいるとみていいだろう。 おもしろく感じられるのは、琉球の交易の主役が香辛料であったにもかかわらず、沖縄料理自体にあっては香辛料は未発達であることだ。 個人的には沖縄の食べ物は好きな部類に入る。豚肉のおいしさに改めて気づく。豚の塩漬け(スーチカー)は絶品だと思う。沖縄に住んで沖縄料理を食べ続けてもたぶん大丈夫だろう。しかしまともな沖縄料理を食べたことがないので、いい店で正しい沖縄料理を食べる経験をしてみたいものだ。沖縄の家庭でふつうの料理を食べさせてもらったこともない。私の沖縄料理体験はとても貧しいのが実情だ。 沖縄料理は日本本土との違いばかりが強調されているが、その基層には日本料理の要素があるという。料理においても日本的要素を中国的要素が被覆したといえるのかもしれない。
by hatano_naoki
| 2007-01-12 19:19
| 沖縄勉強ノート
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