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母胎回帰ストーリー(2)
この事件について多くのブログ記事が書かれているが、そのごく一部を読んだだけで、世の中にはいろんな考えの人がいるものだといまさらながら驚く。
遺族に対するさまざまな種類の嫌悪感をむき出しにするひとがおり、弁護団に対する強い支持を表明する人がいる。それらを読んでいると人間の思考と思考がおりあわず、互いの理解が不可能であるに違いなく、そこらじゅうで不愉快なきしみが聞こえるとき、相手とコミュニケーションができない状況というものが相当な絶望であることを具体的に理解することを迫られる。
たとえばこの裁判の傍聴を続ける遺族の主張を、さらにはその人格を攻撃する人がいること自体、それはおそらくイデオロギーの問題ではなく何らかの感情に基づいているように思えるのだが、私には彼らがほとんど完全に理解できない。あいだに深い裂け目がある。彼と私の距離に戦慄する。匿名に隠れた卑怯者の発したことばのカミソリが空(くう)を飛び回っている。その光景を見ながら、ひととひととは理解できないのだと思っている。

この公判の経過をわずかなマスコミ報道だけを通じて知りえている私は、深く絶望しているらしい。公正な裁きを通じて社会に正義をひろめるべく行われているはずの裁判は多くのひとびとに理解のできる論理をもって進められるべきだし、何が起きたかの真実に迫るべく行われているはずであり、千でも二千でも言い募ることが可能な「ストーリー」の捏造開陳の場であってはならないはずだ。本当に起きたことはなにか、本当の動機はなにか。裁判の場でそれが行われないで異様なストーリーの怪物が跋扈しているので、私はさらに絶望する。
by hatano_naoki | 2007-07-27 20:50 | 日日
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